うたむげ5話目のふりかえり
…という書き出しではじまる記事が、最終更新日:3月1日で下書き状態になっていました。そのまま夏になったあげく、もう6話目も終わってますが?!
今更感がただよっていますが、この際なのでちゃんと最後まで仕上げました!
前回のお話を思い出しつつ読んでください。
「泡沫に紡げ」第5話
〜別れの日の空はあんなにも青く〜
サブタイトルから、誰と誰との話題だろう…?とざわざわしていただいた回です。
いろんな別れはありましたが、空が青かったのは翊羅と虹瑠との別れの日だったのでした。
「泡沫に紡げ」第5話
— mizu (@miz_circle) December 29, 2022
〜別れの日の空はあんなにも青く〜 (終)
5話目はここまでです、6話目に続きます#らくえれ pic.twitter.com/xKp0bpBckN
信頼できる上司の甫豆回も死んじゃったし、確実に死が待ち受けてることも宣告されて、行き場のない不安と苛立ちを抱えた人々の捌け口にもされ……からの、虹瑠大暴れ!
だったので、もしかしなくてもあそこのシーンのイメージが…一番強かったんじゃないかなと…思います 笑

というわけで。
それっぽい力を使えるらしいぞというフラグだけは立てつつも10年間謎に包まれていた虹瑠の『魔法』は、肉体強化系だったということがこんなところで判明しました。
1〜3章では「どうやら魔術師らしい」ということだけは明言されつつも何ができるのかずっと不明だったんですよね。
どうやらシンプルに本人が(物理的に)強くなるタイプのようです。
傷口や病気の回復・死者の蘇生はできないくせにこんなことができてしまうあたり、『魔法』はとても胡散臭いですね。
蘇生はまあともかくとして、肉体の強化なんて体組織の活性化みたいなものだろうし…回復と似たような現象なんじゃないかなって感じなんですけどね!
ちなみにこの魔法なんですが、術者本人にかけるんじゃなくて、部下にかけて自分の身を守らせるのが本来の使用法らしいです。『契約』とセットにして使う感じで。
星亜あたりが現場にいたら「そういう使い方をするものじゃない」ってツッコミをいれたんじゃないでしょうか。
「えっ…なに自分から殴りにいってるの…?そういうのはプロに任せないとダメじゃん…(ドン引き)」みたいな。(釐於子「お前が言うなよ」)
虹瑠は、魁嘛や釐於子みたいにちゃんと職業として「戦う」ための方法を学んできたわけではないので、ケンカに関してはまったくの素人です。
なので、人の殴りかたはもちろん攻撃のかわし方も知らなくて、全部まともにくらってるんですよね。
あーあ…
とはいえ、暴れ出すとそれなりに大変なことになるので、1章の依守弥はこの時命拾いをした気がします。

このシーンとかも、勠南の『魔法』で制止してなかったら殺●クマさん大暴れになってたんじゃないかな…
(ツェルテが止めてたような気もしますが)
(6/9) pic.twitter.com/HlAeGWYkWw
— mizu (@miz_circle) August 29, 2022
この世界において「魔術師」という肩書きは、免許みたいなものなので。
「昔、魔法を覚えたんだけどもうここ100年以上使ってないし、今はもう管理職じゃないし勝手に使ったことがバレたら処罰されるだけだし、特に使う用事もないから黙っとこ」みたいな感じで名乗ってない人は他にもいると思います。
ペーパードライバーのまま、免許の期限が切れたから車には乗らなくなっちゃった人…みたいなものですかね?(ちょっと違う?)
もしくは、銃が許可されてる国で、使い方は知ってるけどそう簡単には撃たない人みたいな…??いい例えが出てこない!
長年大きな戦争とかは起きてないということになってる世界観なので、平時から人間相手に魔法を使ってガンガン戦ったりはしないんですよね。
こっそりよからぬことに使ってる人はいそうですが。
◆◆◆
5話目は虹瑠回のようなものでもあったので、もうちょっと補足します。
(長くなりそうなのでこのあたりで小休止しておいてください)

施薬院が暴徒たちに囲まれた、このとき。
本当に暴力のみで解決したいんだったら、わざわざ声なんてかけないで不意打ちで彼らに殴りかかって、問答無用で拳で叩きのめしておけばよかったんです。
その方が無駄に殴られることもなくて、ダメージも少なかったでしょうし。スカッとしそうですし。(?)
でもあえてそれをしないで、話し合いもおそらく無駄なんだろうなというのもある程度「わかったうえ」で、まずは真正面から相手の出方を伺う…というのが、虹瑠的には重要だったんだと思うんですよね。
虹瑠は、『王国』末期に社会に対して色々と失望することがあって、既存の秩序に一石を投じようとした(そして失敗した)側の人間です。
でもだからといって、決して秩序そのものを否定していたわけではなく。
あくまで、永遠に続く世界において、その状態を維持しようとする人々の無意識から生まれた歪みに対して危機感を抱いていました。
強硬手段をとりつつも、本人もそれが最適だったとは思ってなかったんじゃないかな…と。

そしてその秩序は、虹瑠の行動とはまったく別の次元で、原因すらわからずに崩壊しはじめます。
これまで自分たちが当たり前のように享受していたはずの安心も安定も平穏も、すべてがよくわからない謎の力のようなもので壊れていきました。
『空腹』という現象が広まりはじめてからの虹瑠は、もうずっと感情がぐちゃぐちゃだったでしょうね。
旗を焼く焼かないでためらっていたのが生ぬるく思える規模で各地で反発ムードが高まって、社会はどんどん勝手に崩れていって。
「いっそこのままなにもかもめちゃくちゃになって滅びてしまえ」という気持ち。
「こんな世の中を求めていたわけじゃない」という気持ち。
何もわからず、ただただ抗えない変化を恐ろしく思う気持ち。
混乱の中でも親しい人々が危険な目にはあって欲しくないという気持ち。
それぞれが同時に、頭の中で混ざり合ってうずまいていたんじゃないかなと。

みんな死んでしまえばすべて終わりにできるのに…と思う気持ちも、粲歌と名付けた新しいちいさないきものに生き抜いてほしいと願う気持ちも、どっちも嘘じゃなかったと思います。
人の心は、矛盾している気持ちが両立するものなので。
そして、力を持たない者が守られるためにはなんだかんだで秩序が必要です。
(秩序という概念も幅広いので何をさすのか難しいところですが…この場合は公的な手段による治安維持でしょうか)
それも理解していました。
ゆえに、この状況下で自分からそれを揺るがすようなことは、できるだけしたくないと考えていたんじゃないかな…。
一歩間違えると、法なんてお構いなしに相手を叩きのめしたほうが正義、な世界になっちゃうので。
わざわざ自分も一発殴られてその姿を周囲に見せることで、話し合いの余地はなくてあくまでこれは正当防衛だったということを証明してから拳で反撃してるのは、虹瑠的には意味のある行為だったんじゃないかな〜と思います。
自らの手でシメることで相手を反省させたりもしないで、あくまで時間稼ぎをしてその後の扱いは公的な組織である兵士たちに任せようと。
(加減ができないのでオーバーキルになっちゃってますけどね!)
どっちかっていうと、ブチ切れてるというよりも「この場は殴るしかないな…よし、殴ろう」って決めて感情スイッチをオフにして殴ってる感じだったのかもですね。
いやわかんないですけど…ちょっとくらいは怒ってたかも…
どうなんですかね。本当のところを聞いてみたいです。
◆◆◆
……長いな!
ここにきて、ずっとやってなかった主人公トークをやってるから仕方ないな!!
もうちょっと続きます。
「傷を負っていた虹瑠を逃して、炎に巻かれて死んでしまった友人」は、特に隠すつもりがないのではっきり言ってしまうと、世麓のことです。
・現代で再会しているメンバーの中で、世麓が一番最初に死んだ
・虹瑠が、世麓の死に責任を感じている
このあたりがヒントなんですが、語られたのがあまりに大昔なのでわかりにくかったかもしれません。
ここの回想シーンも「思い切って顔まで描いてしまえばよかったんや…!」と後から思いました。

世麓は、1章メインキャラで唯一うたむげの中に名前が出てこないんですが、密かに他の章とのつながりの鍵となるポジションなのです。
レインザおじさんの学友・ノックスさんは、世麓の取引相手ですしね!

ノックスさんの詳細は「楽園に還れ」3話 と、「幻影に望め」1話 あたりをご覧ください。
さりげなく何度か出てきているお医者さんです。
ちなみに、なんども留年しているのでレインザおじさんよりちょっと年上らしいです。
グラハムテーザは、入学するのはもちろん単位をとって進学&卒業する難易度も高い学院なので。
虹瑠が北方から東方に左遷されてきて、世麓たちと出会って、そこから火をつけるまでに至った過程にも、ものすご〜〜〜〜〜〜く色々あったんですけど。
(概略プロットの段階では入れるつもりだったんですけど)
うたむげ内でそこを描いてしまうと主題から逸れそうなので、虹瑠ミーツ世麓のエピソードと叡謝祭の火災に関しては丸々カットしました。
このあたりのエピソードの扱いは前々から悩んでいます。
どこまで描くかの判断が…難しいんです…
そこがメインの物語じゃないので&掘り下げすぎるとジャンルが別物になってしまうのでさらっといきたいんですけど、1章のラストで思わせぶりな会話をさせてしまったがゆえに「いや、ここまで言っといて回収しないわけにいかないのでは?」と苦しむ羽目になりました。

↑↑↑ここ!ここです!!!
ここで未来の自分に丸投げをしたから…!『組織』ってなんだよ!?(逆ギレ)
勿体ぶってぼかすような表現をしたら、エピソードとして描く必然性が出てくるんですよ?!!?!
こういう言い方したあとで2章に突入してあんな風に終わると、てっきり「レジスタンス的な組織が発足したのかな?」って思っちゃうじゃないですかー!
2章の「永遠に続け」が完結した時点で、この後で星亜が慧畄瑳や虹瑠たちと手を組んで革命的な行動をとるのかな?ってコメントをくださった方もいらして、そうだな〜そういう話に見えちゃうよな〜って思いました。
自分が読み手側だったとしても、そう思うかもしれないなと。
ごめんなさい。実は……そういう話じゃなかったんです……
正直なところ、これは自分の演出ミスだと思います。
初期の段階では、革命的な要素が出てくる案がないわけでもなかったので、そういうどっちつかずな迷いがネームに出てしまったのもあるかもですね。
らくえれ最終話を描いた頃、まだ長編を描きはじめて2年目でしたし。
◆◆◆
そろそろ後半にさしかかってきたので言っちゃうんですけど、2章とこづけは意図的に「秩序・悪」と「混沌・善」が対立する構造…かつて(80〜90年代頃?に)あった王道的な物語の敵対構造(?)に寄せていたところがありました。
4章うたむげは、そこに対する対立命題みたいな章なので。
『王国』という存在が「問答無用で倒すべき悪!こいつさえ倒せば万事解決!」みたいなわかりやすいポジションじゃなかったというのは描写しておきたかったのでした。
『王国』にもダメダメなところはいっぱいあったんですけど、その中のいくつかは構造上の問題で生まれてしまったところがあって。
(中には実際に裁かれるようなことをやってた人もいたので、そこはまあ裁かれとけって感じなんですけど)
ここまで続いてきたのには理由もあるので、ぶっ壊れたらぶっ壊れたで大変なことになるんやなと…。
カタストロフィが起こる前になんとか方向転換できたらよかったのかもしれないですけど…
崩壊、しちゃいましたからね。
もう後戻りできないとこまできてしまったので、今生きてる人々が現状をどうにかしないといかんのです。
恐ろしい話なんですけど、うたむげで描いてる内容って本来はぜんぶ3章でやるつもりだったんですよね。
無茶だよこんな…3章だけで何百ページ使うの?!!!
もういっそ、最初から「虹瑠編」「釐於子編」「翊羅編」で「3篇同時スタート!どこからでも読めます!」にして、幻影で合流して物語がひとつになりますな感じで再構成したい気分です…が、それも今言ってもはじまらないことなので。
最初はここまで先の流れは具体的に見えてなかったので……仕方なかったんだ……。
もう後戻りできないとこまできてしまったので、今描いてる自分が現状をどうにかしないといかんのです。
(※これは自虐です)
◆◆◆
本題に戻ります。
シリーズ第1章「楽園に還れ」、そして第3章「幻影に望め」は、「虹瑠」の記憶を持つ少年視点の物語です。
うたむげ5〜6話目は「楽園に〜」とリンクする内容が特に多く、そちらを読んでないとちょっとピンとこない点もあるかもしれません。
他の章はWebからでも読めますので、未読の方はよかったらご覧ください!
読めるところは色々ありますので、お好きなところでひとつ。
→サイトのコミックページ
→Pixiv
あと、なんだかんだシリーズ全体の把握には同人誌版の総集編2冊を読んでいただくのが一番早いと思うので、リンクを紹介しておきます。
BOOTHで通販をやっていますので、興味のある方はこちらからどうぞ!
→PaperStage Online
「泡沫に〜」は次回で最終話なんですけど、6話目のヒキから分かる通り、虹瑠がのこしていったものが鍵になってるんですよね。
なので、虹瑠がどういう人物で、なにを考えてきたのかなあというのを今更ながらおさらいしてたりします。
たぶん、最終話では抽象的な話もたくさんすると思います。
会話が多い回ってなにげに罠が多くて、油断すると、虹瑠じゃなくて描き手である自分の考えてることを言わせてしまいそうになるかもしれない。
個人的にそれは避けたいところで、あくまでこの世界に生きた人々の想いと願いを描写していきたいなと。
創作物って残酷なまでに作者の中身がうつしだされてしまうところがあると思うんですけど、それはあくまで結果であってほしいんですよね。
なんていえばいいんでしょうか…
作品全体を通して自分の中にあるものを表現することと、登場人物を自分の主張を代弁させる道具にしてしまうこととは、自分の中でちょっと…いや明確に違うんです。
(いやもちろん、ひとの思考なんてある程度限りがあるので、どこかでキャラの主張と自分のそれが被ってしまうこともあるとは思うんですが。そもそも自分が生み出しているものだし。)
(でもそこで「主張を言わせてしまうこと」をゴールにはしたくない…というか…?)
(一歩間違えると誤解を招きそうな表現だけど、これ伝わるだろうか??)
この作品はどこまでも、この世界に生きた、翊羅と虹瑠と粲歌、そしてノルテたちの物語。
それを忘れないようにしつつ、最終話のイメージを膨らませていきたいです。
ふせったーに書いていた内容もブログでサルベージしておきたかったんですが、キリがないのでいったんここまで!
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